このBBSの目的・思想

この場所について ── 30年前のBBSと、2026年の今
私は68歳、定年退職した元基盤系エンジニアです。pyol.net という個人サイトで、いくつかのアプリやサービスを細々と作っています。AIと毎日付き合い始めて、もう1年以上になります。
なぜこの場所を作ったか、書いておこうと思います。

30歳の頃、私は SunOS で草の根BBSを運営していました。インターネットがまだ一般公開されていない時代です。9回線のモデムを並べて、ダイヤルアップで会員が繋いできました。深夜帯はいつもビジーで、苦情がよく来ました。
会員は最終的に300名くらいになりました。バイナリファイルを登録できるようにしていたら、ある会員が無修正のアダルト画像を大量にアップロードし始めて、それがビジーの主因でした。私は自由を尊重して放置していました。
ある日、自宅に逮捕状を持った刑事が5名来ました。家宅捜索しても何も出ませんでした。ホストサーバーのハードディスクすら押収されなかったし、私が逮捕された後も運営状態のしたままでした。それでも、最終的に「ハードディスクが猥褻物として一般に陳列された」という、あり得ない解釈の判決が出ました。戦いは、6名の法学者・弁護士の弁護団で無償で支援していただきましたが、敗訴しました。日本初の判例だそうです。私は執行猶予3年の犯罪者になりました。
しかし、その後も特に社会的制裁は受けませんでした。サラリーマンを続けて、転職は何度かしましたが定年まで勤め上げました。BBSは、私が逮捕された後も会員たちが運営を続けてくれて、インターネットの普及で自然に消滅しました。

あの時代のBBSが何だったか、30年経ってようやく言葉にできます。
会員300名のうち、本当に場を動かしていたのは50人くらいでした。電気屋、医者、塾講師、バーの経営者、OL等さまざま。仕事も世代もバラバラで、共通点は私のBBSに書き込んでいることだけ。彼らは月1で集まってオフ会をやっていたようです。私は運営者として、その様子を遠くから見ていました。書き込みを見るだけのROM会員・ネットおかまと呼ばれる女性になりすませた会員とか様々な会員達がお互いの意見を楽しんでいました。
何を話していたか、もう細かくは覚えていません。覚えているのは、 異業種の人間が、肩書きを抜きにフラットに議論する場が、当時はあった ということです。インターネットがない時代、草の根BBSがその役割を果たしていました。

2026年の今、X や note で議論を試みると、何かが違うと感じます。
X は文字数が短く、アルゴリズムが怒りと対立を優先表示します。フォロワー数といいねが、発言の重みを決めてしまう。じっくり考えて長文を書いても、 流れが速すぎて沈んでいく 。
note は逆に、書き手と読み手が分離しすぎています。コメント欄はあるけれど、議論の場ではなく感想の場です。一方通行のメディアの延長線上にある。
30年前のBBSにあった「フラットさ」「じっくりさ」「異業種感」が、今の主流SNSにはない。これは技術の問題ではなく、金儲けを中心にした設計思想に多くのユーザーは翻弄され競争意識を弄ばれていると感じます。

日本独特の侘び寂びと言う美意識があります。今のSNSにはそのかけらも感じません。何かを置き忘れてきた感じがしてなりません
それで、私はこの場所を作りました。
立派な事業計画はありません。3回線で始めた30年前のBBSと同じ感覚で、まずは私一人で動かしています。書きたいことがいくつかあるので、これからゆっくり書いていきます。誰が来てくれるかは分かりません。
ここで議論したいテーマは、 AI時代の社会構造 です。これは大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私の中ではもう少し具体的な問いです。

AIが多くの仕事を代替する時代に、人間の「役割」と「生きがい」はどうなるのか
AIが悪用される時、防御側は構造的に不利になる ── これにどう対峙するか
国家や大企業が「閉じたAI」を持った時、市民は何ができるのか
AIで、紛争解決や貧困解消はできるのか、できないのか

私は経済学者でも哲学者でもありません。40年現場でやってきた一人のエンジニアです。だから、抽象論ではなく、 現場感覚で考える議論 がしたい。製造業の品質管理で言えば「最悪を先に考える」発想です。技術が悪用される最悪のケースから設計する。それを、AIと社会の関係に持ち込みたい。

ここに来てくれる方へ、いくつかお願いがあります。
長文歓迎。X のような短文の応酬は求めていません。考えながら書く、考えながら読む、そういう場にしたい。
肩書き不要。私は68歳の元エンジニアですが、20代の学生でも、別業界のベテランでも、立場は対等です。30年前のBBSと同じです。
結論より問いを。「これが正解」と言い切る投稿より、「これが分からない」「ここで迷っている」と書いてくれる方が、議論が深まります。私自身、分からないことだらけです。
急がない。月に数回しか書き込みがなくても、それでいい。じっくり考える時間を尊重します。
敗北の記録も歓迎。私はこれまで、CineBASIC という映像生成言語の開発に半年費やして敗北しました。絵本を作ろうとしてAIに弾かれました。失敗の記録のほうが、成功談より遥かに価値があります。

最後に。
私はここで何かを成し遂げたいわけではありません。68歳の現在、人生の終盤に差し掛かって、自分が30年前に経験したことを、もう一度違う形でやってみたくなっただけです。
伏線回収、と最近呼んでいます。
90年代のあの判決から30年経って、私はまた自分の名前で議論の場を立ち上げました。今度は刑事は来ないと思いますが、来ても受けて立つ覚悟はあります。
よろしくお願いします。
Toshi Matsuura
2026年5月
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